スマートフォンやタブレットで気軽に読める「ウェブ漫画」。
このウェブ漫画で今、レディースコミックの人気が再燃しているといいます。
レディースコミックの内容自体が「スマホでこっそり読む」ウェブ漫画と相性が良いことも関係しているようです。
レディースコミックの最初のブームは1980年代と、今から40年も前のこと。
そのころ、1か月に400ページも描いていたという、漫画家の井出智香恵さん(72)。
今でもトップを走り続けている井出智香恵さんは、読み応えのあるストーリー展開と流麗な絵柄、そしてときに盛り込まれる過激な性描写で人気を博しています。
人気少女漫画雑誌「りぼん」の連載から、レディースコミックまで、描いてきたジャンルは様々。
実は井出智香恵さんは、壮絶なDV体験をお持ちでした。
レディースコミックを描くのは「生活のためです!」
もともとは井出さんは大のミステリー好き。
好きが高じて、ミステリー小説の漫画化を数多く担当されていました。
その時、激しい感情表現を描写する技術に長けている!と気が付いた当時の担当者に『もっと過激なエロを』求められるようになります。
そしてそれが、ますます読者にウケるように。
しかしもともとは「りぼん」などの少女漫画なども描いていたので、ジャンルは真反対です。
レディースコミックで漫画を描くことは、不本意ではなかったのですか?との問いには、次のようにお話しされています。
ぜんぜん。ジャンルではなく、漫画を描くことが私にとっては何よりもの喜びでしたから。
たしかにバカにしてくる男性漫画家はいましたし、『なんであんな漫画描くの?』と言うお友だちもいましたよ。
だけど(元)旦那は働かないし、育ち盛りの子どもが3人いましたしね。
『子どもたちを食べさせるためです』って言うと、みんな黙りました。
(『ホームレス主婦』(C)井出智香恵/ぶんか社)
働かない元旦那。壮絶なDV。離婚に踏み切れなかったのは・・・・
『子どもたちを食べさせるため』。
元旦那が働かなかったので、レディースコミックを描いて子供たちを育て上げます。
どうしようもない男でね。
心の病気で、季節の変わり目は特にひどかった。
私は言葉では何を言われても平気な顔をしてるので、手が出るんです。理由は何でもいいんですよ。
たとえば髪を切ったら『俺に黙ってなんで切るんだ』と食卓を引っくり返すんです。
そして廊下の隅に追いやられて殴られ続ける。
床に顔を押し付けられてね、脂汗がじっとり滲んだ顔が埃まみれになって…。
今でも夢に見ることがあります。離婚したいと言うと、子どもを殺すって言うんですよ。
向こうは働かないですから、私の収入が目当てだったんです。
田舎に似合わないランボルギーニなんか何台も買ってね。
女を囲って。一番下の娘と同い年の子まで、そちらの方と作ってましたからね。
最終的には、長女が殴られ失明しかけて、離婚調停に踏み切ったといいます。
10年もかかったという離婚調停後、住所などを知られぬよう、細心の注意をはらいました。
「空想で描いても読者は満足しない」。自身のDV経験や、人生相談をしていた経験を生かす
実録系の漫画は、想像だけで物語を描いても読者は満足しないといいます。
私は漫画としてはファンタジーも描きますけど、人生相談をしていたこともありますし、また読者が投稿してくれた実体験を元にしたした本を出したこともあるので、ネタには事欠きませんでした。
事実は小説よりも奇なりじゃないけど、空想では追いつけない、想像を絶する体験をされてる方って本当にたくさんいるんですよ。
自分のつらい体験も勿論だが、世の中には大変な思いをしている女性が他にもたくさんいる。
その声を拾い上げて漫画にしていく過程で、かならず決めていることがあるそうです。
私が決めているのは、必ず希望をもたせた終わり方にすること。
復讐劇とか女性が自立する話とかストーリーはいろいろですけど、とにかく読者が苦しみから抜け出すアドバイスやヒントを盛り込むようにしています。
それがDVものの漫画を描く原動力にもなっていますしね。
DVは治らない。逃げることが一番。幸せになるには・・・・
もしもお金があれば「DVに苦しんでいる女性のための施設を作りたい」とも語る井出さん。
そして、今、DVを受けている女性たちに対して、次のように発信しています。
暴力を振るわれた後に甘い言葉をかけられても、絶対にほだされちゃダメ。
DVは決して治りません。
今は耐えるしかないと思ってるかもしれないけど、旦那にバレないように情報収集をして。私の漫画にも旦那を欺く方法をいっぱい書いてますから、どうぞ参考になさってください。
幸せになるためには、ときはズルく賢く立ち回ることも大事です。
私の漫画で救われる女性が1人でもいることを、心から願っています。
辛いDVを長期間にわたって経験されてきた井出智香恵さん。
これからますます精力的に、自由にご執筆されますよう、応援しています!
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